第9話 パーヴェルとフョークラ 2★(●に近い)

前回の『パーヴェルとフョークラ-1』の続きになります。
商人様が、料理女で魔女と呼ばれるアクリナを虐めているのかいちゃいちゃしているのか、という回です。
かつて盗み見た、父パーヴェルと父の愛人であった魔女フョークラの行為を、アクリナ相手にやってみたりします。
ほぼ最後までに近い性描写があります。

8月13日から8月14日夜,1826年

父パーヴェルと魔女のフョークラがかつてしていた行為の記憶は鮮やかだ。
その光景をアクリナに話しながら、私は父と魔女との行為を模倣している。
私はアクリナの前に膝で立ち、アクリナの服の胸から臍までをはだけ、乳房に触れている。
アクリナが言った。
「……エヴゲーニイ・パヴロヴィチ、……貴男様がその様子をご覧になったとき、お母様は? 早くにお亡くなりになったのでしたね」
「あと、二、三年は生きていたよ。父は鳩小屋から、伝書鳩を飛ばし、フョークラに今日行くという合図を送ったものだった。母はそれに気づいていた。父が鳩を飛ばしたあと必ず泣いていた」
アクリナは私の母のために泣く。「それは……残酷です……」
「うん」
私自身も似たようなことをしているではないか?
アクリナの乳を、絞るように揉み、乳頭を口の中で転がしている私の背後で、子供時代の私が覗き、そのさらに後ろには、奥の寝室で……リザヴェタが病気で寝ている。ここで行われている行為を、幻のように感づき、悪夢に見ながら。

私は真っ赤になったアクリナの乳頭から唇を離す。
「……ああ、それでね」
「はい、エヴゲーニイ・パヴロヴィチ……」
「それから二年ほどあとだったかな。パーヴェルは、領主館にフョークラを呼んだんだ。母の病を治すために、魔女に薬草を煎じさせようというわけだ。
母が知らないと思っていたのはパーヴェルだけだった。フョークラは毒でも飲ませたかもしれぬ」
アクリナの体が硬くなる。
「え?」
「ナディジェダはそれからしばらくして死んだから。まあ、わからないがね……でもフョークラは葬儀にきて笑ってたよ。私は確かに、父に似ているな」
「いいえ……だって、貴男様なら、お二方の苦しみにお気づきになります」
アクリナは誰に同情しているのか知らないが、泣いている。気づいても何もしないという選択もある。

「ちょっと腰を浮かせてくれ」
「は、はい」
ベンチのアクリナが腰をあげる。
私はそのすきに、アクリナの臍まで下ろしたルバーハを、さらに足元まで下ろした。
泣いていたアクリナが、わずかに驚いたように、何が起きたのかわからないというふうに私を見あげる。
こういう時のアクリナは鹿か兎か、何か草食動物を思わせた。毛皮を剥がれて少ししてからようやく、自分が皮を剥がれたことに気づくのだ。そのときはすでに、焼ける痛みに包まれている。
私は彼女の体が見たかった。薄暗いランプに照らされ、白い下半身の、藁色の繁みがじっさいよりずいぶん濃い色に見えた。フョークラのもののように。
腕を両方上げさせ、サラファンを丸めながら、頭の上まで持ちあげる。
釦のないサラファンはたぐりあげて丸めれば単なる布でできた輪になる。両肘から先に巻きつけた。アクリナは胸を開き腕を上げ、肘を背後に折った状態で、サラファンの輪を手にひっかけている。
私はサラファンを片側に寄せて引き絞り、輪の途中で固く結んだ。

「……ああ、商人様。何をなさったのです」
アクリナはようやく、自分が腕をあげた状態のまま、二本の腕どうしを肘から先で、……こともあろうにみずからのサラファンで! ……結びつけられているのに気づいたらしい。ほら、毛皮を剥いでも死なない鹿か兎だ。
今、アクリナの両腕は、肩の部分でならば多少は上下できるが、頭が邪魔をし、前側に動かすことはできない。
「……商人様、貴男様はどうしてこんなことをなさるのですか!」
「おまえが好きそうだからね」
「そんな、どうしてあたしのせいになるのです」
私は再び、父のように膝をつき、動けぬアクリナの乳房を下の丸みからなぞっていく。
「こうやって縛られていれば、どれほど淫らに悶えようと皆、私のせいにできるではないか」
アクリナは驚いたようだ。
「貴男様のせいにする……?」
アクリナの目がまた潤む。
「そんな……あたしは自分が淫らなことを、貴男様のせいにしているとおっしゃるのですか……」
私は乳房の輪郭を撫で続ける。
「……自分が淫らだと認めたね、アクリーヌシュカ」
「ひ、ひどい……引っ掛けたのですね。貴男様は、学があって賢くていらっしゃるからって、」
アクリナの目からぼろぼろと涙がこぼれる。
「そうやって、体どころかあたしの心までなぶりものになさるのですね」
「おまえが淫らなのはほんとうではないか」
「違います……あ、貴男様があたしを」
「また私のせいなのだね」
「……そんな」
私はアクリナのあげた腕の、腋の下の複雑で滑らかな凹凸と、それを隠す藁色の薄く柔らかな体毛を撫でた。
腋の下の汗に濡れた体毛と、長い料理女の生活でも、ここだけは鍛えられなかったらしい、二の腕の裏の、白くたわむ皮膚に口づけしていく。
ランプがアクリナの体を照らしていた。足元に落ちたルバーハが、足枷のように見えた。

「そう、パーヴェルとフョークラの話だ。
フョークラは十二分に上半身を愛撫されたあと、身につけていた服をすべて、みずから脱ぎ捨てた。体を前に折って、パーヴェルの体の一部を咥えていたよ」
「……その行為は、敬虔な正教徒ならば決してしないことです」

「その数日後に私もやられたのだが……」
「なんてことを、十一歳のお子に……」
「いや、私は……そのころにはもう……女を孕ませる液を出すことができた」
アクリナは戸惑っている。私がフョークラの犠牲者なのか何か別のものなのか、判断がつかないらしい。
「フョークラは私の白い液を出させて、飲んでしまった。二度目は」
「二度目って……お通いになったのですか……」
「通ったけれど、その日の二度目だ」
「ああ、もう。なんという方なのです! そんなお年で」
「私のせいではない。瓶に溜めていたよ。三度目も……十一歳の童貞の少年が魔女の舌の技巧に耐えられるものか。
アクリナ、おまえに訊きたかったのだが、あの液を何に使うのだろう。男の白い液で作る薬があるのか? 何に効く?」
私は純粋な好奇心から訊いたのだが、アクリナはほんとうに自分が魔女扱いされたと思ったらしい。
「どうして……あたしを魔女だとお思いなのですか」
アクリナが、抑えていた涙をまた零しはじめた。私は、幼い少年の精液を搾り尽くすまで出させたフョークラの気持ちが初めて理解できた気がした。あれこれと技巧を尽くしてアクリナに涙を流させるのはなんと楽しいのか。

「……あたしは、薬草のことを少し知っているだけです。貴男様は、そんな……黒魔術を使うような魔女だと思っておられたの……ですか」
顔を歪めて泣きながら訴える。
私は別に、アクリナが白魔術だけ行う善良な魔女であろうと黒魔術を使おうとどうでも良い。薬草の扱いといった実用の部分以外、魔術自体が迷信としか思えないのだが。
「そうか、黒魔術に使うのか。……そういうことは、門外不出なのじゃないかね……」
「違います、違います!」
「薬草のことを知っているのと、黒魔術のやり方を知っているのは確かにかなり違う」
「あたしは、そんな液のことなど知りません! 搾り取り方も存じません。
……あたしはフョークラには……似ていません。フョークラのような、そんなことはできません……」
水に浸かったように顔じゅう涙でいっぱいにして泣いている。
「舌で私の、……ほら、このあいだおまえが撫でてくれた部分やあの首の細くなった部分を舐めたり、舌を震わせて叩いたりしていたよ。
おまえは私のためにあれをやってくれないのか? 正教徒ならやらない? でも、おまえが軽蔑するフョークラは」
軽蔑なんかしていません、とアクリナは言う。
「フョークラは、父にその快楽を与えてくれていたのだよ。息子の私は、彼女がいなくなった今、もう受け取れないのか? アクルカ、おまえは私に……フョークラがパーヴェルに与えたものを、くれてみようともしないのだね」
アクリナはあからさまに動揺している。他にもそれをやってくれた女がたくさんいたであろうことなど考えつかないらしい。

「あ、……」アクリナが引き攣った。
私は乳房に触れながら、首筋に口づけしていた。細い首が伸びて、斜めに走る筋が浮き出ているのが私は好きだった。
「ああ……」
首筋が顎おとがいに達するあたりでアクリナが瞬間的に痙攣したのだ。
「苦しい……そこは……どうかおやめください」
「それは快楽の種だよ、アクリナ。そっと触れていけば……おまえの喜びを増す場所になる」

「あの……商人様……」涙が次々に落ちてくる。しゃくりあげながらアクリナは小声で、ようやく囁く。「……あたしの、……あの、……あの場所に触れて……」
泣く。
「ああ、ついにそんなことまで自分から言えるようになったのだね。……で、どこだって……?」
「ほんとうに……ひどいお方です……貴男様がいつも……あの、」
「ほう」私は再び首筋とおとがいの交点から、耳の後ろへと舌を移す。
「ああ!」と、おそらく本人も意図していないほどの声で叫んでいた。こんな場所があるとは知らなかった。私は私の頭の中にだけある、アクリナの体の地図に今の場所を書き加える。

「……静かに。リザヴェタお嬢様に聞こえたかもしれないよ」
どうせばれたのだ。聞こえても構わない。
「お名前を出さないでください。こんなところでお呼びしては申し訳なくて、冒涜するようで……」
わが民族の祖先たちは、熊の名を出すと熊が現れるのではないかと怖れ、名を呼ぶのをやめ、どうしても呼ばなければならない時には、遠まわしに『蜂蜜を舐めるもの』などと呼んだ。そして、元々の名は失われ、蜂蜜を舐めるもの《メドヴェージ》が代わりに熊の名になった。
アクリナは古代と変わらない心性を残しているというわけだ。
「ああ……もし、あの方にこんなことを知られたら、あたしは耐えられません……」
(実際にはもう知られていた)

「触れてくださいまし……お願いです、エヴゲーニイ・パヴロヴィチ、……あの、パーヴェル様……」
「どこに? フョークラ」
「……貴男様がいつも……あたしの、石榴色だと呼ぶ……」
私は唇に軽く接吻する。
「唇も石榴色だ」
そしてさらに左の乳房をもてあそんだ。
「……もう……耐えられません……苦しいです……あたしの商人様」
アクリナはうつむいて激しく泣きだす。
「あたしの商人様、ね。ついに私はおまえのものか」
「申し訳ありません……あたしが貴男様の物なのです……だから憐れんでください。触れて……ください」
私はアクリナの申し出を叶えた。藁色の薄い繁みをかきわけ、石榴色の裂け目に指を差し込む。すぐに私の指は透明な粘る液体にまみれる。
「ああ、やっと、……ありがとうございます、商人様。あたしの体を乱暴になぶってください。酷い目に合わせて……」

この女がこんなに淫蕩であったとは、予想だにしていなかった。それを知っているのは世界で私一人だけであった。
だが、たぶん、間も無くそうではなくなるだろう。
今のリザヴェタは、私がアクリナを無理に手籠めにしたと思っている。(それは事実なのだが)
だから、アクリナは私のような破廉恥漢から逃れ、もとの清らかな暮らしに戻りたがっている。……それ以外の状況を、リザヴェタが考えつくとは思えなかった。
だがそうではないことは恐らくいずれ見破られる。アクリナはまったく嘘がつけないのだ。
アクリナは涙で顔を濡らしながら、みずから脚を開いていった。私の手によって透明な粘液をべったり垂らし、時折引き攣り、体を反らしながら何度も礼を言うのだ。

彼女の両足はルバーハが絡まった格好で、私は笑っていいのか欲望を掻き立てられているのか、よくわからなかった。
ペチカのベンチからアクリナを抱き上げる。
痩せた体は、疲れて眠気に襲われてきた私にも呆気なく運べる。私はアクリナの足に絡まったルバーハを片手で叩き落とす。
「私のものを咥えるのはそのうちやってみてもらおう」
「え、……あ」
「咥えて、まあ、舐めたり、そっと吸ったり、舌で叩いたり口の中を上下に動かしたりするだけだ。別に痛いわけではない」
「あの、怪物をですか……?」
すがるように私を見る。
「やらなければ抱かないと言ったら? いつも私がおまえの体をいじって快楽を与えているばかりだ」
「でも……あの怖いのです。……生きた魚を口の中に入れるようで……す」
「魚? しかし、エラだの、硬く尖ったヒレだのウロコだのは……さすがに生えていないのだが……」
「晩餐会のまえに魚のスープウハーを作っていて思いだしたのです。……たった今、料理している鱒マスのようだったと……ウロコもエラもヒレも包丁できれいにしましたけれど、まだ鱒の体はピンとしていて、ホテルで触った貴男様の、……あの部分のようにぬるぬるしていて……」
「あ、ああ。そうか」
「あたしは……ホテルで入れていただいたものは、やはり怖い……です。あたしの体を押し広げながら引き裂いていくようで、痛くて壊れてしまいそうです……」
「慣れてくれ。それとも入れないほうが良いのか」
「いいえ、いいえ、入れてください。……」
「しかし、痛いのだろう?」
「はい、でも、そのときの貴男様のご様子が……失礼ではありますが、あの、好きなのでございます。
……いつも、優雅で冷たそうな、……貴男様が、あたしに深く入れるほどに、あたしを見下ろしながら、だんだんと苦しそうになって、あの、吸い込まれるようにお顔をしかめて……、」

「私はそんな様子なのかい?」
笑いながらもアクリナの意外な観察力に舌を巻いた。
「は、はい……歯を食いしばって、あたしを見下ろす目が急に、とても優しくおなりでした。……子を孕まぬように急いで抜いてくださいましたね。
そのあとすぐに白い濁った液が出て……貴男様は、しばらくのあいだ、あたしに覆いかぶさったまま、何度も何度もあたしの名前を呼んでくださいました……」
「名前を呼ばれるとそれほど嬉しいものかね?」
アクリナはうなずいた。
「そうか」
それは逆に、今まで誰にもろくに名前を呼ばれなかったということなのだろう。
それに、とアクリナは続ける。
「白い額に幾筋か垂れた前髪のご様子も、あ、あの、好きなのでございます。
口づけするために時折近づく唇や……、貴男様の硬い下腹やお腰の骨や、あたしにくさびを打ち込むために、激しく行ったり来たりするお尻も……みな、どうすれば良いのかわからないほど、惹きつけられて……しまうのです……ですから痛くて良いのです」
「なるほどね。私がおまえの反応や体の変化を楽しんでいるように、おまえも私が射精するときの無様な姿をうっとり眺めてくださっているのだね。フョークラも私から搾り取りながら、嘲笑って見ていたな」

「いいえ、ああ、違います。無様でなどまったくありません………晩餐会のまえは、そのご様子が浮かんできて、体のあちこちが痺れて……疼きだして、前掛けの上からでいいから体をぎゅっと抑えたいほどでご……ざいました……申し訳ございません。こんな無礼な口をききまして……」
「おまえはおかしくなってきているようだね。可愛い、淫らなアクリーヌシュカ」
私はアクリナを寝台の上に投げ出す。
「うつ伏せになっていなさい」
「はい」毛皮の掛け布に、ランプに照らされた背が白く浮かんで、背の筋や、尻の割れた場所が濃い影になっている。
「……あの果実を自分でさわっていなさい」
「……はい」
私は服を脱ぎながら言う。「まだ、咥えるのはいい。どうせ役に立たない」
「あの……申し訳ございません……商人様」
アクリナは先ほどまで正教徒にあらぬ行為だとか恐ろしいだの冒涜だの破戒だのと言っていたのも忘れたように、自分がその行為ができず、やり方も知らないことを恥じている。
私はアクリナの上に乗り、後ろから乳房をつかんだ。
喉をそらさせ、撫でる。もちろん、あの石榴色の場所は我が国の口承文芸にしょっちゅう登場する「母なる湿れる大地」どころではなく、「氾濫した渓谷」の状態だ。
私は後ろから、脚を開かせ、私の器官を押しつける。
「痛みはそのうち消える」
「……はい」
膝をつかせ、尻を持ち上げようとするが、アクリナは膝から崩れ、再びべったりとうつ伏せになってしまう。
「は、早く……商人……様」
アクリナの声はひどく眠たげだ。寝台横の懐中時計を見ると、二時近い。冗談ではない。この緯度の土地では、夏の夜はあと一時間ほどで明けてしまう。
「もう、寝ないと……でも……あ、あの、もっと触ってください……けれど……」
「また、どこか、時間を気にせず交われる場所に行こう」
「はい……」
私はアクリナとともに素裸で布団に潜り込み、後ろから彼女を抱きしめる。ご希望に沿ってアクリナの名前を何度も囁いた。
アクリナはすぐに寝息をたて始める。冷たい尻に私の充血して痛む器官……鱒? 鱒だって? ……を押しつける。
眠る彼女のあちこちを触り、私とアクリナの皮膚がこすれあう感触を静かに楽しんでいるうちに眠りに落ちたらしい。
たぶん明日、いや今日の昼間はひどいことになるだろうと思いながら。


アイキャッチ画像
“Beginning of spring”
Painted by
Alexei Savrasov (1830–1897) [PublicDomain]