第21話 妻●

前回『身代わりの鞭』での出来事が波紋を呼んでいます。領主様は傍観していますが、困ったのは奥様のリザヴェタがとても怒って口もきいてくれないことでした。
●最後までの性描写があります。(ほとんどそれしかありません)

12月1日,1827年

隣家の領主アレクサンドル・ポポフに私が鞭打たれたという話は瞬く間に近隣の地主、さらにその召使いたちの間に広まった。召使いは召使いどうしで社交があるらしい。
私の怪我はかなり良くなり、まあ、傷は残るが……アクリナを傷つけることを思えばどうということはない……。

私本人に漏れ聞こえてくる話は、おおむね、変人の領主どうしが妙な理由で揉めて、信じられないような変な方法で決着をつけた、という扱いであった。
さらに影で何を言われているかはわからない。
もちろん尾ひれがついている……最近私が娶った妻をめぐっての争いだとか(この話は当然、リザヴェタを激怒させた)、鞭打たれた際の私はまったくの素裸であったとか(ご婦人たちがひそひそ囁きあって赤面しながら喜ぶのならば結構な話だ)、女農奴の取りあいをしていたとか、私が農奴を使って莫大な量のキノコを盗ませていたとか……まあ、なかなかヴァラエティに富んでいた。
最後の噂が一番まずい。

私はポポフ家の家令に頼んで、ほぼ正確な内容を伝えさせた。すなわち、原因は私が連れてきた農奴の恋人にあること、彼女が間違えてポポフの領地に入り、代わりに私が鞭打たれたというものだ。
この内容も問題はあるが、少なくともキノコの盗み採りをしていたというものより、はるかにましであった。

意外な反応もあった。

見習い家令のステパン・テレージン少年が、母屋の書庫で……ここには、掃除の者以外は、私と彼しか入らないのだ……たまたま出会った私に近づいてきた。
「お怪我はもうよろしいのですか?」
涼しげで利発そうな少年に見える。このまえ、夜が怖いと泣きじゃくっていた面影はない。
「ああ、ステンカ。まあ動けるようになってきた」
ステパンはまだ何を読むべきかわからないらしい。ルソーとバイロン卿、チャーダーエフという、とにかく名前を聞いたことがある著作者の作を読んでみようといったところだ。

「あ、あの領主様」
ステパンは妙にかしこまって言った。呼びかけてからしばらく黙っている。
「なんだね?」
「僕は貴男様のことを誤解していました。あ、あの器用で色々な能力のある方かも知れないけれど……略奪者で、ひどい好色漢で、領主という立場を使ってアクリナ様のような美しい方を平然と踏みにじっておられるのだと」
「……ああ」
言いたい放題言われている。
いつの間に、ステパンはアクリナを『美しい方』にしていた。
「……ですが、今回、貴男様が、アクリナ様の代わりに鞭打たれたという話を聞いて……本当にアクリナ様を大事にされ、また、農奴だから簡単に捨てるわけではなく、いざとなれば中世の西ヨーロッパの騎士のように身を投げ出されるのだと……僕は、貴男様の偏見のなさと愛情の激しさに……感動いたしました」

青くさい感動の吐露に私のほうが戸惑った。
「ああ、いや……ちょっと君は、物事を美化しすぎる」
「しかし、身分を超えてアクリナ様を愛しておられるから、ああいう行動をお取りになったのでしょう?」
「……まあ、そうだが」

『身分を超えて』『農奴なのに』といった言葉が気になった。
農奴の娘に恋でもしているのか? それならば身分違いではある。
ステパンは父を始め、何代か続けて務めている家令の一族の出だ。祖先は元は農奴だったらしいが、たいへん役立つ男だったため、何代か前の当主が目をかけて取り立てた。そのうち農奴身分から解放し、自由民にして、家令にした。
その子孫の、冷静で冷淡に見える若者は、実は情熱に惹かれているらしい。
それとも、……? ああ、農奴の娘に恋をしているほうがはるかにましだ。

「農奴の娘に手を出すんじゃないぞ。真面目に相手にするなら構わんが、それは相応の覚悟と力がいる」
「はい、領主様! ……僕は貴男様を尊敬いたします」
「やめてくれ。面映(おもはゆ)い。……ステンカ、もしかすると農奴解放論に興味があるのか」
「い、……いえ、とんでもないことです」
さすが十五だか、十六の少年だ。すぐに本音が透けて見える。
「ふん、私の又従兄が十二月党員(デカブリスト)でね」
「存じ上げております」
私への尊敬には、私ですらほとんど会ったことのない、その又従兄に対する英雄視が重なっているに違いない。

「農奴解放に関しては時期尚早だと思うね。君のせっかくの尊敬を失うかも知れないが」
「どうしてでございますか」
「いや、彼らの教育程度や、暴力性や迷信ぶかさ……を思うと、ただ野放しにしただけでは流民が増えるだけだろう。ひどい領主は多いが、三圃式なら三圃式、輪栽式なら輪栽式で、耕作計画を立てる者がなければどうしようもない。少しずつ教育を与え……まあ、百年後だな」
「はい……わかります」
理解はできるのだろうが、若者はすぐに結果を欲しがる。
「ステンカ、とりあえず、この農場をましにしていこうではないか。君はあと、英語を覚えろ。ドイツ語もフランス語もいらない、英語だ。多分、これからはイギリスが優位に立つ」
「は、はい、領主様!」
「さらにとりあえず、アクリナに明日には行くと伝えてくれ。傷もふさがったと。あと、彼女にどういった病気なら確実に治す自信があるか聞いてみてくれ」
「はい。い、今から行ってまいります」
「別に急がなくて……」
ステパンは飛び出て行った。

もちろん、ステパンのような例は例外中の例外であった。家の者のほとんどは、ただ呆れていた。
私が子供のころに働いていて、また戻って来た料理女のオクサーナは『さすがはルーシの獰猛公ですわね』と笑った。
ステパンの父で家令のテレージンには、うやうやしく呆れた声で「何故一言私にご相談くださらなかったのです」と怒られた。

妻のリザヴェタは私の怪我が良くなってきたら、まともに口もきいてくれない。私はここ二、三日書斎の長椅子で眠っていた。
それならそれで構わないとも思うが、農場の事を考えると、これから一月ほどの間、リザヴェタには大いに活躍してもらわねば困るのだ。

「リザヴェタ、これから週に一回、アクリナのところに泊まることにします。あの場所は心配だ」
夜で、私たちは主寝室にいた。リザヴェタはおどろくほど量の多い、膠を塗ったように濃い焦茶色の髪を解き、ブラシをかけていた。
「……わかりました」
振り向きもせずに答える。
「怒っているのですか」
「いいえ」
ということは怒っているのだろう。こういう時、アクリナなら、問い詰めれば、泣きながら本音を語るのだが……。リザヴェタはほんとうに頑固だ。面倒だ。

リザヴェタは立ち上がる。
夜着は白い絹のシュミーズで、シベリヤから持って来た兎の毛のカフタンを羽織っている。背はアクリナと同じくらい(普通の婦人より、ほんの少し高い)、胸と腰が豊かでコルセットなしでもウエストが締まり、大胆な曲線を描いている。
姿勢が大変良いのは、軍人である父の教育の賜物であろう。
肌は蜂蜜色で、太い眉毛や濃い睫毛に縁取られた目は力強い。
ギリシャ彫刻の女神のように堂々と、冷たく寝台に歩み寄り、毛皮のカフタンを脱ぎ捨てた。
肩紐で留めた、白絹の夜着だけの姿になった。そのまま寝台の端に潜る。私に背中を向けたきりだ。

私は寝台のリザヴェタの側に座る。
「貴男様はあちらでしょう」リザヴェタが言った。
「別に決まっていないと思いますが」
私はリザヴェタの手にてのひらを重ねた。右手を取って、接吻する。
「お怒りなのは、この前の隣家の領主との争いのことですね。ごもっともです……ただ、もうすぐ聖ニコラの日ですし、降誕祭の期間も始まる。貴女と私が仲違いしている姿を領民に見せるわけにはいきません。不満はおっしゃってください」
「貴男と仲睦まじく見せるのもわたくしの仕事だとおっしゃるのね」
「そうです。ですから、不満があればお教えください」

「不満ですか……ポポフ様とは二度と争いませんね」
「はい」
「あの、血まみれのお姿を見たときはほんとうに心臓が止まるかと思いました……」
「もう、あんなことは私もごめんです」
リザヴェタはしばらく考えている。
「それから」意を決したように言う。
「……レオニード様の前で、あの人のお腹を抱いて、太腿に横たわっていましたわね」
あの人とはアクリナだ。「はい。弱っていましたから」
「あの人はすごくきれいになっていました。はじめ、誰だかわからなかった」
「元からきれいでしたよ」
「不潔です……」
「何が?」
「ええ、あの人のことは結婚の条件に入っています。承知して受けました。でも、人前で……あんな」
「人前であったことが問題なのですか?」
「……そう、レオニード様にも、どんなにわたくしが惨めに映ったことでしょう!」
「別にそんなことはないと思いますが。あのあとの貴女の見事な対応に舌を巻いていただけで」
「……こっそり、わたくしの知らないところでお会いください……使用人は仕方ありません。でも、外の、わたくしの交流のある方には知らせず……」
「わかりました。申し訳ありません、リーザ」
私はリザヴェタの小さく柔らかな手を握っている。

「おわかりになったら、あちらがわでお休みください」
手をもてあそびながら、「いやです」と答えた。
「……なんですの……。ひさびさに妻に情けをかけてやって仲直りしようとでも?」
「ええ、まあ、そうです。いやですか」
「ええ。だって、貴男は……あ、あの人のほうがお好きでしょう!」
参ったな、と私は思う。
「だったら何なんです。貴女は私の妻なのですよ」
「……ええ、わたくしが妻であの人が違うのは、単にわたくしのほうが身分が高かったからです。
そして、あの人に教育がなかったから。それだけです。あの人がせめてわたくし程度の身分と教育があれば……、貴男は二人も女を抱えこまなくて良かったのですわ」
「ああ、要約すると、貴女は私に婦人としてあまり愛されていない気がする、と」
「違いますの」
私は答えるのをやめた。丸まって横になっているリザヴェタの上にのしかかる。

「……そうやって、わたくしを抱いて誤魔化すおつもり?」
リザヴェタは苦しげだ。初めて会ったころの、あの陰鬱な表情が戻っている。
「レオニード・バシュキロフに見せたいなら、呼んでこさせましょうか。あのぼんくら男は貴女に惚れています。私が死んだらあいつと再婚すれば良い」
「また、妙なことを言って誤魔化そうとなさるのね」
「誤魔化す?」
私は横たわるリザヴェタの左右に膝をつき、豊かな硬い髪をかきあげる。濃いまつげに縁取られた、力の強い目が潤んでいる。
「誤魔化すというのは、私があの人に恋をしていて、貴女にはしていないことですか」
「……なんで……そんなこと。わざわざおっしゃるのです。知っていました……。不潔です……五つも年上の……どこで何をしてきたかもわからない人に」
私はリザヴェタの白い夜着の上から、体に触れた。

「いえ、かなり知っています。モスクワであの人の領主だった方に会いました」
「ああ、やっぱり」
「領主は立派な方です。少なくともあの人を慰み者にしたりはしていません。……あの人は、ナポレオン戦争の時に婚約者を亡くし、それ以来貞操を守ってきたのですよ。不潔なら私のほうがよほど不潔ですが」
私はリザヴェタの乳房の上を撫でる。白絹越しに、乳首が尖ってくる。「ええ、そうですね……貴男が一番不潔です。いったい何人の……」
「何十人です、リザヴェタ。商売女は数に入れずに」
「ああ、い、いや……そんなこと聞きたくありません」
「ええ、私も話しません。いずれにせよ、もう関係ない人たちです」
私はリザヴェタの腕を上げさせ、脇の下を撫でる。脇毛も艶やかだ。

「こんなの……惨めです。わたくしは貴男の妻で、貴男に恋をしているのに、貴男は他の方を……」
リザヴェタは泣きそうだった。
「ああ、リーザ、ようやく白状しましたね。褒めてあげますよ」
「エヴゲーニイ・パヴロヴィチ、わたくしをそうやっておなぶりになるのですね。
貴男に恋をしているから……妻としてうまく使える……馬鹿な女だと。褒美に、たまに愛撫してやればうまく動くと」
「別の男を試してみますか? ぼんくらのバシュキロフでも、美男の玄人でも……話をつけますよ」
「どうしてそんなにひどいことばかりおっしゃるの。レオニード様は、貴男にない良いところをお持ちです。常識人で穏やかで……巻き込まないでください」
「善良で退屈で、寝台でも退屈そうですね……いや、でも惚れたご婦人のためなら少々無理なこともやってのけるかもしれませんよ」
「レオニード様がわたくしを思ってくださっているなど信じられません。例えそうだとしても……」

私はリザヴェタの夜着をまくり、ドロワーズの紐を解く。リザヴェタの高めの体温で夜着も下着も暖かかった。
「ああ、もう、勝手になさってくださいまし!」
「例えそうだとしても、何ですか」
「わたくしは、貴男様に恋をしているのですから。貴男様はどうしようもない方ですけれど!」
「良いところもありますよ。可愛いリーザ」
私は臍に接吻し、ドロワーズを引きずり下ろす。白絹の夜着の裾は戻し、その上から体を撫でる。絹はぴったりと体に密着し、リザヴェタのウエストがくびれた豊かな体を、ささやかな凹凸に至るまで浮き出していた。
アクリナにもこのような夜着を買ってやろうと思う。
私は夜着の上からリザヴェタの乳房を愛撫する。「乳房から生娘の硬さが取れてきましたね」
「……変わるものなのですか」
「はい。貴女の体は、私に合うように変わっていくでしょうね。私はしつこいのですよ」

私は夜着の上からゆっくりリザヴェタを撫でていた。
「リザヴェタ、貴女は寝台ではもう少し乱暴に扱ったほうが良さそうですね」
リザヴェタが体を固くする。「どうしてそう思われるんですの?」
「乱暴に、きつく抱いたほうが、愛されているように感じられるのではありませんか」
「本当は違うのですね」
「いいえ、私はうまく貴女に愛情を示してこなかったのではないかと反省しています」
「それで、乱暴に? ……訳のわからない理屈ですこと!」
「私は、寝台でご婦人を乱暴になぶるのが好きなのです。貴女にはそうしなかった。だから、……私の好きな方法で貴女も抱きます。そうして貴女を喜ばせたい」

リザヴェタはさっとこわばる。「……何ですの……鞭ででも打つおつもりですか」
「いいえ、ご要望とあればやりますが」
リザヴェタはひどく不安そうだ。「貴男は……神に背くような行為を……なさるおつもりですの?」
「サド公爵のゆかりと言うほどではありません。私の乱暴など大したことはありません。痛い思いもさせませんからご安心ください」
『サド公爵』という言葉が、リザヴェタを激しい不安に陥れたらしい。
さすがサンクト=ペテルブルクでフランス語を学んだだけはある。名前くらいは知っているようだ。
私はリザヴェタの上に伏し、優しい口づけをした。「可愛いですよ、リーザ」

私はリザヴェタの肩を掴んだ。
「何を……」
私はそのまま彼女の体を横へと転がした。リザヴェタはうつぶせになる。濃い色の、膠を塗ったような髪が広がる。
私はリザヴェタの腹に手を回し、腰を持ち上げさせた。夜着に豊かな臀部の形がはっきり浮き上がる。私はそこを撫でた。
「あ、あの……」
「素敵です」
私は背中から抱きしめ、リザヴェタの上半身を立て、激しく乳房を揉んだ。背中が痛い……。
「く、……苦しい。痛いです」
「少し乱暴にすると言ったでしょう」
乳首を指で挟みながら揉む。下ろした艶やかな髪をかきあげ、首筋からうなじへと乱暴に吸っていく。痕が残るだろうが構わない。「あ……いや、痛い! いや」
私はリザヴェタが動けないように羽交い締めにしたまま、顔をこちらに向けさせた。怯えている。そして信じられないというように私を見ている。なかなか良い表情だ。

「きれいですよ」
私は彼女にまた優しく口づけする。
頭をそらさせ、喉元を軽く噛む。舐め、吸いながら、私はリザヴェタの首筋から胸元へ、背後から調べていく。敏感な箇所はないか探しながら。
「痛い! ああ、噛まないで……本当に、乱暴すぎます……こういうのが、お好きなのですか……」
「はい。これで首筋にもうなじにもたっぷり痕が残りますよ。ちゃんと貴女が私に愛されていることを皆に示せます」
「そんな理由で噛んだのですか……ひどい……」

「リザヴェタ、可愛いらしくなってきましたね」
リザヴェタの上半身を前に倒した。リザヴェタは両膝をつき、羽枕のうえに顔から倒れた。
私は私の寝間着がわりのローブから帯を外した。素早くリザヴェタの腕を背後に回し、両手首を軽く縛る。
「な、何をなさるつもりなんです!」
「愛撫です」
「こんなのいや! 大声を出しますよ」
「そんな姿を使用人たちに見せたいのですか?」
「う……ほんとうにこんなことがお好きなのですか……」
「はい」
リザヴェタの体は、うつぶせになり、頭は枕につけ、尻だけ高く上がった姿勢だ。夜着の裾から右手を滑りこませた。太腿の裏、内側をてのひらを揺すりながら撫で上げる。
「いや……、怖い、おやめください……こんなこと、普通の正教徒の夫婦がすることでしょうか……」
「皆、何か妙なことをしているのではありませんかね」
「そんなわけ、ありません……」リザヴェタの声は息も絶え絶えだった。「縄を解いてください!」
「いやです」

右手をリザヴェタの夜着の裾に滑り込ませながら、左手は夜着の上から豊かな尻を撫でる。
そのまま、左手で両足を割り、膨らんだ崖にはさまれた裂け目のなかへ向かった。白絹の夜着がこの複雑な凹凸に見事に貼りついている。私はこの辺りを揉み続ける。
「リーザ、夜着が貼りついて、貴女の裂け目の形がはっきり浮かんでいます……肉の厚い崖や、大ぶりの果実や……開いたり閉じたりする深い洞窟」
「おやめください……こんなの、わたくしが、た、ただの貴男様の玩具のようで……」
「洞窟からはもう、潮があふれています。夜着が濡れてへばりついています。私はこういう光景が好きなのです……」
すでに膨れあがった陰核を白絹越しにつまんだ。
「い、いや!」
リザヴェタが腰を動かし逃げようとするのを、私は尻を掴み、動かないように押さえる。

「エ、エヴゲーニイ・パヴロヴィチ……これが貴男様のお望みなんですの……女を辱めるような……」
「恥ずかしいですか?」
「あ、当たり前です!」
「貴女のようにしっかりした御婦人が、褥では羞恥と快楽で乱れるというのが、私は好きなのですが……わりと男には普通の願望だと思いますね。もっと可愛い声を出してください」
私は果実をぐっとつまみ、転がす。
「う……あ、ああ……もう許して、お、お願いです」
「気持ちいいでしょう?」
私は果実をさらに押さえつけ、こすった。
「う……」リザヴェタは声を噛み殺している。
左手では難しい。私は、裾から侵入して内股を撫でていた右手で、裾を掴み、夜着をいっきに腹まで巻き上げる。「あ、ああ! なんてことをなさるの……」
私は剥き出しの尻に接吻する。リザヴェタの尻は堂々として、丸い。右手で湿った繁みに触れ、また、果実のどくどく動く姿を眺める。
「ああ、リーザ、きれいですよ」

「そんな場所……きれいなわけが……ないじゃありませんか……。貴男はわたくしを辱めて……喜んでいらっしゃる」
「いや、きれいです。鏡でご覧になりますか?」
「ああ、ふざけないで」私はリザヴェタの陰核を剥いた。「う……も、もう……」
私は剥いた果実の粘膜を舐めながら話を続ける。
「少し塩味がしますね。貴女と一度泳ぎに行きたい。水の中で、貴女の服を脱がせますから、水中で交わるのです……そう黒海のオデッサに……」
「あ、あああ……いや」
「黒海沿岸のゲレンジークは、『白い花嫁』という意味で……スラヴの奴隷がトルコに売られていたのですよ。
貴女が売られるために素裸で、……競り台に乗せられているところを想像すると……本当に興奮します……」
リザヴェタの膣に指を入れ、中を探りながら私は陰核を舐め続けた。
「やめて……」
「今やめたら苦しいだけでしょう」

私はリザヴェタの尻を押し、転がした。「え、あ、ああ!」
背中で手を縛られたリザヴェタが、仰向けになる。顔は汗だか涙だかでいっぱいで、髪の毛が貼りついている。瞋恚しんいの目が私を射た。顔じゅうが紅潮している。
「なんてきれいなんだ」
私は膝を持ち、いよいよ脚を広げた。濡れた肉の洞穴から粘液をとって、果実になすりつけ、より激しくこする。
「こ、こんなふうにわたくしを辱めて……これが妻に……た、大切にするっておっしゃったではありませんか……」
「申し訳ないですが、貴女にそういう姿をとらせるのが私の好みです。妻なら諦めてください」
「ああ……もう、貴男の変な姿が次から次へと現れてくる……」
私は軽く口づけする。リザヴェタが顔を背ける。

「すごいですよ、リーザ、貴女の果実は、私の親指くらいに膨れあがっている。びくびく震えています」
私は円を描くように指の動きを早めた。
「ああ……助けて、体が変です……何を、いや!」
「母屋じゅうに伝わりそうな声ですね」
リザヴェタは返事もできずガクガク震えている。恥部の盛り上がり全体が緊張している。私はただ、恍惚に至るこの突起を回し続けるだけである。
「可愛いですよ、私のリザヴェタ。いきなさい」
「いや、……あ、ああ、はああ!」
長い悲鳴をあげて、リザヴェタは脚をさらに開いた。陰核を抑える私にも、内腿の激しい痙攣が伝わる。
「あ、……ああ、何が……起きたの」
リザヴェタは涙とよだれを垂らし、まだ引っかかっている夜着は汗で貼りつき、乳房も腹もすっかり透けている。
私はそのまま、ようやく痛みを覚えなくなったらしい奥底に向けて、私のものを差し込んでいく。

「い、いや……」
痙攣がまだ続き、私を揺らす。
ときおり、本人の意思とは関係なく、全身を震わせる。
「恍惚に達したのですよ、リザヴェタ」
「恍惚ですか……」
「ええ、あの場所をうまく刺激し続けると、恍惚が訪れるのです。婦人の恍惚は深く長い。羨ましいことです」
私はリザヴェタの背に手を回し、ローブの帯を外した。腕を自由にする。
「痛かったですか?」
「殺される……のかと……」
「まさか」
私は羽織っていただけのローブを脱いだ。腰を動かす。リザヴェタが可愛らしく見える。少し浅く、粒のあるところをこする。
「あ、……」
まだ気持ちが良さそうだ。リザヴェタがしがみついてくる。
「背中が……痛い」鞭の傷跡は完全には治ってはいない。
「ごめんなさい」

リザヴェタは離れ、横たわりながら私を不安げに見上げている。私は腰を折り、耳元で囁く。「リーザ、私のものが入っているところを、きゅっと締めてごらんなさい」
「え……こうですか」
「はい……締めつけられて良いです」
「まだ、じんとします……」
「慣れれば、そのまま続けて恍惚にいくこともできます」
リザヴェタは一生懸命、締めつけようとしていた。入ってすぐの、粒のある箇所を狙って私はリザヴェタに突き立てる。
「う……あ」リザヴェタはまたうめき出した。
「そこも……ああ、感じるところのひとつですよ……」
私は速度を早める。

「エヴゲーニイ・パヴロヴィチ……」リザヴェタが私の腰に手を回した。「ああ、……わたくしがどれほど貴男をお慕いしているかご存じないでしょうね」
「どうしてそれほど素直なのです?」
「初めてお会いした時から……何度貴男に抱きしめられる夢を見たか。ただ一度でも、戯れにで良いから接吻してくださればと、……だから、これ以上贅沢を言っては駄目なのですわ」
「私は貴女を愛していますよ」
「嘘をおつきになってはいけません。あの、嘘ではないかもしれませんが……でも……」
「黙って……それ以上言っては駄目です。嘘ではありません」
私はリザヴェタの頬を撫でる。切ないような揺蕩いが訪れかけており、勢いをつけてリザヴェタの中に私のものをこすりつけた。
「ああ、……貴女の中は……」
ああ、ああ、アクリナ……、多分声には出していないと思う。私はリザヴェタの中に放出し、彼女の上に倒れ臥した。しばらくそのまま二人でじっとしていた。

疲れきった。
「何か……飲みませんか。クワスは」
「はい、持って来ますわ」
「いや、私がとって来ます」
私はローブを羽織り、重い体を引きずるようにして、長椅子の卓に置かれたクワスのピッチャーから、二杯のグラスに入れた。寝台に戻り、一杯をリザヴェタに渡す。
なかなか惨憺たる、魅力的な姿だ……夜着は汗で貼り付き、腹までめくれ上り、脚も、濃い色の恥毛も剥き出しになっている。気づいているのかどうか、リザヴェタは疲れきっている。私は夜着の裾を直した。「……あ、ああ。わたくしはなんという格好で……」
「いや、気になさらないでください。……私が時々、貴女をじっと見つめているのはご存じですか」
「え、あ、はい。気づいていました。あれは何ですの? 仕事ぶりを見ておられるのかと」
「いえ、ドレスの下の貴女の体を思いだしたり、今はどうなっているのか想像したりしているのですよ」
「……ああ」
「はい」
「も、もう、嫌です……」
緊張が解けたのか、リザヴェタが静かに泣きだす。「リーザ、今の話でどうして泣くのです……」
私はリザヴェタの背に腕を回し、抱きしめる。
「わたくしが、こんなにお慕いしていると申し上げているのに……貴男が……」
あまりに好色で、変だからです、とリザヴェタは言った。


アイキャッチ画像
“Spring2”
Painted by
Alexei Savrasov (1830–1897) [PublicDomain]